さうしたら、あなた、

奈緒子  さうしたら、あなた、あたしを恨むでせうね。
由美子  恨むわ。でも、あなたを冤してあげたい気もするわ。あなたを恨みながら、あなたの罪をかぶつてもいゝと思ふわ。
奈緒子  感謝するわ。あなたは優しい方ね。
由美子  でも、あなただつて、おんなじでせう。あたしが、若し、あの方と結婚できなくつて、死んでしまつたら、あなた、どうなさる。
奈緒子  ……。
由美子  平気ではゐられないでせう。
奈緒子  ……。
由美子  ねえ、おつしやいよ。平気でゐられる?
奈緒子  御免なさいね。あたし、平気でゐられるかも知れないわ。それや、あなたには同情してよ。泣くわ、きつと……。でも、あの人を、あなたと、あたしと、二人の力で愛してあげるわ。あたしが、あなたの分まで生きるんだわ、結局……。
由美子  さうね。あなたは、えらいわね。強い方ね。
奈緒子  でも、かういふことは、口で云ふだけよ、きつと……。あたしたちは、一人の男の為めに、生きたり、死んだりしなけれやならないのか知ら……。さつき云つたことは、嘘よ。
由美子  えゝ。
奈緒子  いゝえね、あの人が、うちの母さまに云つたつていふことね、あれは、みんなあたしの作り事よ。あの人が、あたしの処へ来るのは、たゞ、あたしが、あなたのお友達で、あなたのことを一番よく知つてるからだわ。
由美子  ぢや、さつき、なぜあんなことをおつしやつたの?
奈緒子  あなたがあんまり幸福だからよ。

長い沈黙。
川口市 歯科