あたし、ほんとに幸福か知ら……

由美子  あたし、ほんとに幸福か知ら……。
奈緒子  幸福になれるといふことが幸福なら、あなたは幸福だわ。しかし、これからが問題よ。
由美子  さうね。あの人、あたしのこと、何か云つてた?
奈緒子  えゝ、云つてらしつたわ。でも、相手の云ふことだけを聞いて、悦んだり悲んだりしてゐちや駄目よ。あの方も、あなたが何か云つてたかつてお訊きになるかも知れないけれど……あたし、さういふ時、なんて云つたらいゝの? あたしに、さういふ役目はつとまりさうもないわ。だから、云つていゝことだけ、ちやんと云つといて頂戴。
由美子  あら、だつて……。困るわ。あたし……。
奈緒子  あの方が、あなたを愛してらつしやることはたしかよ。でも、男つて、いくたりもの女を、同じやうに愛することができるつて云ふから、あなただけが、さうだと思ふと間違ひよ。どうして、あたしの顔を見るの。あたしのこと云つてるんぢやないわよ。たゞ、さういふもんだつて云ふことを云ふんぢやないの。
由美子  でも、なんだか、変だわ。
奈緒子  なにが、変なの。さういふことを考へ出せば、きりがないわ。なんて、あたしにも、そんなことを云ふ資格はないけれど、女が、心の中で、一人の男を撰んで置くなんて、実際、無意味ね。あたし、さう思ふわ。求められた手を、差し出すか、差し出さないか、一生を一度、その時だけだわ、自分のそばに、一人の男を並べて見られるのは……。
由美子  奈緒子さん、どうなすつたの……。
奈緒子  どうもしないの。あら、あんなに……あんなに鳥が……(空を仰ぐ)
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