お医者さんの仕事に例をとつてみる

お医者さんの仕事に例をとつてみる。ある地方で開業してゐるお医者さんで非常に腕もあり信用もあつて、普通ならどう見ても立派なお医者さんで通る人である。しかし、そのお医者さんは、自分のところへ来る患者の脈をとり、薬を与へ、専心その治療に当つてゐるといふだけで満足し、その地方の一般保健衛生の問題には一向無関心なのである。青年の体位が低下しつゝあることも、乳幼児の死亡率が高いことも、結核蔓延の徴があることも、きつと知らない筈はないのに、これに対する医者としての方策といふものを考へたことがなく、まして、自ら進んで、この問題の解決に乗り出さうとはしない。それは政府がやることだと空嘯いてゐる。かういふお医者さんが大部分であるといふ結果はどうなるかといふと、日本の現状では、国民の体力は日に日に衰へて行くばかりで、しかもその罪は、国民全体にあるのだけれども、特に、日本の医者にあると云へるのである。お医者さんたちがすべて先頭に立つて、国民の指導階級に呼びかける運動がもつと早く起らなかつた原因はどこにあるか。お医者さんたちの日本人としての理想が曇らされてゐたからである。中野区 歯科